専攻医2

病棟は忙しく、いったい自分がなにをやっているのか、なにをやらないといけないのかが未だに判然しない。

ただ神に誓って私は私にできる最大を行っている。

忙しいときはいつも飯が楽しみになる。朝はもともと食べづらく、昼は忙しくて食べられず、晩に食べるものが楽しみになる。

この病院周りは都会なので店もいくつかある。トルコ料理、インド料理、うどん、カレー、ラーメン、上海料理、いろいろある。街はいい。歩ける範囲になにかある。でも次第にこの街も何かあるように見えて実はあまり何もないように思えてくる。私は贅沢にできており、すぐに悪い意味で慣れるのかもしれない。

昨日は卒後5年目の専攻医の先生と飲みに行った。彼もまた児童精神、小児神経志望であり、北杜夫や三島由紀夫を好むと仰す。

夏目漱石が好きだという人間にあまり出会わないのは不思議なことだなと思う。私は夏目漱石が好きなのにあまりそういう人がいない。私が山ノ口貘が好きだというとそこは投合した。山ノ口貘を好む人間の方がずっと珍しい。

酒をしこたま飲んで朝起きると頭にもやがかかったようだ。今日は本当に病院に行かなくていい日なのだ。外は天気がいいからどこかお参りに行こうかなと思ったが体と頭がぼんやりしてなかなか動かないのだ。

昨日5年目の専攻医から教わったパンチブラザーズとモーズアリソンをYouTubeで聴いているのだ。聴きながら関大徹「食えなんだら食うな」を読んでいる。関大徹は禅僧である。以前、梅田で箕面の神父とI先生を待っていたときに見つけた。そのせいかこの本を読むと箕面の神父を思い出す。神父はたしかに禅的なところがあるように思う。まじめな宗教はいずれも禅的なのかもしれない。

外の天気がいい。紫外線が強烈だろう。貴船や鴨社のことを思うが遠いしとても行きたくはならない。廣田社も遠い。心のままに動きたい。

眠い。頭がすこし重い。

「明日のことは明日自らが思い悩む」という聖書のことばはとてもありがたいことである。

空谷子しるす