角鹿

角鹿と書いて「つぬが」と読む。つぬがというのは敦賀の古名であって、昔当地に渡った新羅の王子都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)にちなんでいる。

人の世は不穏に満ちておった。先の首相が射殺されたり、日本国内の給料が上がらなかったり、露国の独裁者と烏国が戦争したりしていた。病棟では患者が不穏になり、扉を乱打する音が響いていた。

私は気比神宮に行くつもりになった。

とてもよく晴れているから気比神宮に行くのだ。

ラジオは藤井風の「まつり」を流していた。祭りは神様がいなければ塩味の無い塩のようなものだ。神様と人々が楽しむのが祭りである。

敦賀の気比神宮は神宮の名を持つ通り立派なお宮である。清々しい風が吹き抜けて邪な思いは流れていく。都怒我阿羅斯等を祀る角鹿神社は気比神宮の摂社である。隣には子どもを守護する兒宮があり、静かに鎮座ましましている。

昨日は重症心身障害児の在宅訪問診療を見学した。

人は人を見ると間違える。

夜、鹿児島の桜島が噴火した。

世は乱れ、さまざまに入れ替わる。御代替わりとはそうしたものであろう。人間はいい加減なものだ。今の世に褒められる人間に英雄の例しは少なく、全てはただ夢中の中に行われて先の世で検められる。

人間を見ない方が良い。夜の闇に目を凝らす。

空谷子しるす