楽屋裏にて

司祭:ねえねえ、デフォーちゃん
デフォー:なになに、いいワイン入った?
司祭:違うのよ、昼間っからなに言ってるのよ、まじめな話よ!
デフォー:なによなによ
司祭:あのさー、最近若い人が何考えてるか分かんなくってさ。話が全然合わないのよ。
デフォー:あー、若い人難しいよね。もうBTSとか分かんないもんね。
司祭:無神論よ無神論!自分でなんとかなるって思ってるみたいなのよ。危なっかしくて仕方がないわ。
デフォー:それわかるわー、自分で運命を決めるとか思えちゃってるよね。聖書も読んでないでしょ。
司祭:そうなのよ!それよ!聖書全然読まないわよね、ほんとに世も末だわ。
デフォー:わかるわー
司祭:ローマカトリックがいけないのよ、自由意志なんて言い出しちゃって、腹たつわー
デフォー:そこなんよなー。自由意志って言われると若い人にはきいちゃうよね。
司祭:ねえ、ねえデフォーちゃん、あんたちょっとなんか本書いてよ。
デフォー:また藪から棒に。本ってなによ?
司祭:聖書を読まずに自由意志とか言ってると痛い目みるよっていうのがよくわかる本よ。
デフォー:いやいや、そんなの書けないでしょ。
司祭:あんたならできるわよ、小説なんかにしてさ、エンタメっぽく。
デフォー:えー、いや、企画としてはいいかもやけどさ、売れるかねー。
司祭:あんたいっつも飲みながらデタラメなこと言ってんでしょ。ああいう話でいいんだから。あんた才能あるわよ、やんなさいよ。
デフォー:自分で運命をつかもうとしたその先には過酷な現実があった!みたいなことか?
司祭:そうそう。運命を自分でなんて言ってないで、聖書一冊あれば人生なんとかなるっていうのがよくわかるような感じで書いてよ。
デフォー:それやったら、『夜と霧』読ませたらいいんちゃう?地獄のような現実のなかで、人生の意味を問うっていう感じで。
司祭:いや、フランクルちゃんまだ生まれてないから。それに『夜と霧』読んで、じゃあ聖書読むかって気になんないでしょ。
デフォー:それやったら、『生かされて。』はどうよ。過酷な現実のなか、祈りのうちにマリア様が出てきてるやん。
司祭:いや、イマキュレーちゃんもまだ生まれてないから。
デフォー:それやったら、もうキルケゴールでええやん。絶望の仕方もわかるし、キリスト者になろう、ってなるやん。
司祭:生まれてないから。
デフォー:あーみんな生まれてないんかー、やっぱ俺かー
司祭:あんたなのよ、あんたが書くのよ。
デフォー:いけるかも。ちょっとプロット見えてきた。
司祭:え、もう来ちゃったの、すごいじゃないのよ。どんなのよ。
デフォー:いやさー、大航海時代じゃん。若い子で命知らずだと、船に乗って、ブラジルで農園作ったりとか、黒人さらって奴隷にしたりして儲けたりとかはやってんじゃやん。
司祭:うんうん
デフォー:親の言うこと聞かずに船にのっちゃった若い子を主人公にするのわどうよ、いけるかな。
司祭:うわ、もうなんかいい感じじゃないのよ!すっごいデフォーちゃん、やっぱりできるわよ。
デフォー:あーいける気がしてきたー
司祭:過酷な現実みせてやって!
デフォー:無人島に漂流させるか。遭難して死ぬだけやとあっさりやもんなあ。なんかこう、死んだらまだよかったものの、無人島についてもうて生きながらえてまうっていうのはどうかな。
司祭:それいいね、非日常の後に続く、どうしようもない日常、そこで聖書よ!!若気の至りの後には必ず日常のしっぺ返しがくるんだからね!
デフォー:無人島で何年か生活してた奴おらんかった?船長と喧嘩して無人島に置いてかれた間抜け。
司祭:セルカークちゃんでしょ。
デフォー:それそれ。あいつ確か4年くらいやったよな。もっと長い方がいいよな。
司祭:20年くらいにしちゃってよ!舐めてたら現実がどんだけ恐ろしいか見せつけてやって。あと、摂理!摂理ってあるんだ、って分かるようにして。マジで大事だから。
デフォー:摂理かー。確かに、摂理を感じられんことには信仰は深まらんよな。じゃあさ、日付を全部そろえるってのはどう?初めて船に乗る日も、遭難する日も、島を出る日も全部揃える。どうよ。そんな偶然ないやろ。
司祭:あんた天才だわ、デフォーちゃん。あと、ローマ・カトリックの悪口も入れといて。
デフォー:おいおい、注文が多いな。
司祭:ありがとう、デフォーちゃん。今度いいラム酒ももってくからね。

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