喉頭けいれん

抜管した患者が喉頭けいれんを起こして再挿管になった。

私は2回目の麻酔科を回っている。上行結腸切除と肝部分切除の症例であった。165cm、85kgであって巨きな男である。挿管はうまく入った。AラインとCVはうまく入らず、上級医が交代した。

10時間を超える手術だった。術野では外科志望の1年目が始終カメラ持ちをしており、極めて役に立っていた。私は自分が1年目に劣ることに情けなく感じた。

手術が終わって抜管という段になり、上級医が呼吸数や覚醒度合いなどを確かめ、口腔内吸引した上で、私に抜管を任せてくれた。私は呼びかけながら管を抜きマスクをあてた。

しかしSpO2が下がるのだ。私はやんわりとマスク換気を始めたがなかなか入らない。経口エアウェイを入れよと言われ、入れてからマスク換気したが空気がやはり入らない。

SpO2は34まで下がった。

上級医はマックグラスで再挿管を試み、なんとか成功した。どうやら声門が完全に閉じていたらしい。らしいというのは、私はちゃんとマックグラスの映像を見ていなかったのだ。邪魔をするのが恐ろしくてやや後ろにいた。

私は何もできなかった。1年目の研修医は始終適切に動いていた。

私はこの事件から声門閉鎖しているときには強めに陽圧をかけ続けたらいつか気道が通ることを教えられた。

私は私の能力が低いことを改めて思う。1年目や同期の研修医は私のことをいてもいなくても大差ない人間と扱っている。無理もない。

私は厚かましく生きていく。

空谷子しるす

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です