Prisoner

人工呼吸器をつけた患者さんが亡くなり、家族は病院へ向かっている途中。いつ呼吸器を外そうか、このことで看護師さんと若干モメた。呼吸器がついているので胸郭が運動し、患者さんはあたかも呼吸をしているかのようだ(ペースメーカーでも相似した問題は生じる)。私は、モニターや呼吸器、あらゆるデバイスがついた状態の人を見るのがそもそも、好きではない。すぐに外してしまおうとした。ところが看護師さんはそんな私を制し、家族が来るまで待つべきだと言った。つづいて、倫理観が問題なのだ、と看護師さんから言われたため、柄にもなく私の陰性感情が募ってしまった。(外すかつけておくか、事前に打ち合わせしていないのなら外せない、とも言われそんなこと生前にホンマに決めるんかいな、と思ったりもした。)
こんなとき大切なことは遺される家族さんがどう思われるかと想像すること、そして医師より長く患者にふれてきた看護師さんと息をあわせることだ。そうでないと医療の空気が醸成されない。
看護師さんが指摘された真の対象は、私がその場に居合わせたスタッフの理解を得ようとするような態度を取らなかったことであった。後に私の指導医は、その時呼吸器を外すかつけておくかは正解の無い問題だが、私が私の考えにとらわれていたことを指摘した。私は大いに反省するとともに、批判していただいた看護師さんと指導医に感謝した。
されこの方のご家族様には、説明をした上で呼吸器を止めた。生物的に死亡してから30分くらいは経過していたが「死に目にあえた」と家族は満足されているようにも見えた。今回は看護師さんの選択が正しかったようだ。(H)