うまいうなぎ

娘は鯛が好きで、1歳の頃からカブト焼きを食べていた。
もちろん食べさせた結果でもある。
鯛の骨は硬いから子供には危険だから食べさせないという家庭も多かろう。
しかし鯛の頭は安くて美味しい。2つで100円とか150円とか。
魚でも肉でもそうだが、骨の周りが一番うまい。
娘は特に目が大好きで、ペロリと食べて白目をスイカのタネのごとくペッとやる。

4歳になると鯛の刺身を好んで食べるようになり、ほとんど毎日のように食っていた。
妻と鮮魚コーナーで刺身を物色しながら「今日は白身にするか」と言いながら鯛を選んだのだろう。そしてそれを食って、たまらなくうまかった。かくして、娘の脳髄で「シロミ=鯛の刺身」の等式が完成した、に違いない。
スーパーに行けば「今日もシロミ食べたい」と言って聞かない。
シロミ=鯛の独占市場である。

ところが、である。 
それから数ヶ月後、スーパーでたまたま太刀魚の刺身が安くなっており、太刀魚に目がない私はすかさず購入した。
娘にとっては未知の白身であるが、娘は大いに舌鼓を打った。
食べた瞬間、「うま〜い」と。
そのあとも、全て食べながら「うまい!」とうなっていた。

その夜、布団で寝転びながら、「あのうなぎみたいなの、また食べたい」と言った。
はて、うなぎは食ったことが無い。太刀魚のことか。
うまい→うまぎ→うなぎ
なるほど。
美味なるシニフィエと、うなぎというシニフィアンが新たに接続した。

素寒